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高森明勅
2019.2.10 20:37皇室

江戸時代の旧説をそのまま踏襲する歴史書

明治大学名誉教授で日本古代史分野の
代表的な学者である吉村武彦氏。
 
その近著(『大化改新を考える』平成30年)に、
孝徳天皇(36代)の即位(645年)に当たり、
大嘗祭が行われたかのような記述がある(10ページ)。
 
これには驚いた。
 
江戸時代の国学者、河村秀根(ひでね)らの
『書紀集解(しっかい)』(1785年に成立)
の旧説を、そのまま無批判に踏襲しているからだ。
 
大嘗祭の成立は691年。
 
持統天皇(41代)の即位に伴って行われた
(拙著『天皇と民の大嘗祭』平成2年など参照)。
 
それより半世紀近くも前の孝徳天皇の時代に、
大嘗祭が行われるなんてあり得ない。
 
別に、江戸時代の説“だから”踏襲してはならないと、
単純に考えている訳ではない。
 
本居宣長のカミ(神)の定義をはじめ、
長く継承されるべき優れた見解も、勿論ある。
 
だが学問上、とっくに克服されたはずの旧説を、
検証もせずに踏襲しているのが残念なだけだ。
 
恐らく、直接には日本古典文学大系、
又は新編日本古典文学全集に収める日本書紀の注解
(前者は昭和40年、後者は平成10年に刊行)あたりを、
安易に採用してしまったのだろう。
 
私も用心しなければ。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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